2012年11月18日

アルピニスト野口健さんのお話 No709

今日はアルピニスト野口健さんのお話をご紹介します。

バライティー番組で見る野口さんとは違った印象です!


〜〜〜


見ること、知ることは、背負うこと。

見ることは、知ることは、背負うことだと思う。

もともと、エラそうなことを言える人間ではないと思っている。


高校のとき、先輩を殴って停学処分。

山に逃げ込んだのが、出発点だった。

25歳で『7大陸最高峰世界最年少登頂記録』樹立。

フツウのひとが見ない景色を、たまたま見る環境の中にいた。

8000メートルの頂から見る風景。雪嵐、雪崩、荘厳な朝陽。

そして、遭難者の亡骸。



エベレストや富士山のゴミも、たまたま見てしまったから、背負うしかない。

常に地球環境のことを考え続けてきたわけではない。

ただ、見てしまったら、背負ってしまったら、動かなくてはならない。動いたら、後戻りできない。

「たとえ火だるまになろうとも、やるべきことはやる」

それを教えてくれたひとがいる。


そのひとは、日本山岳会の大先輩、そして元内閣総理大臣の橋本龍太郎さん。

僕は今も鮮明に思い出すことができる。

初めて龍さんに逢った、あの日のことを・・・。



たとえ火だるまになろうとも、やるべきことはやる。

僕、野口健が、1999年に初めてエベレスト登頂に成功し、

「ヒマラヤには、日本のゴミが多かった」と言ったことは、山岳会の先輩たちの心証を悪くしたのだと思う。

山岳会の重鎮である、橋本龍太郎さんから、一枚の葉書が来たとき、「ああ、ついに来たな」と思った。


葉書には、流麗な文字で、

「野口君の清掃登山も素晴らしい。

 私がエベレストに行ったときは、前年のイタリア隊が残していったゴミに助けられました」

と書かれていた。


「1988年のゴミが最もひどかった」僕はそう言った。


1988年は、橋本さんが日本隊の隊長をつとめた年だった。


「お前、わかってるな、余計なことをガタガタ言うなよ」


その葉書の細くて読みづらい字を見たとき、そう感じた。

売られた喧嘩は、買わねばならない。

僕は、龍さんがエベレストに残したボンベを持ち帰ることに成功し、事務所に面会を求めた。

巧妙に、敬意を全面に押し出して。

大きなバッグにボンベを隠して、僕はついに橋本龍太郎さんの部屋に通された。

初めて逢う、龍さん。グレイのソファに腰掛ける。

橋本隊のエベレスト登頂話で持ち上げたあと、おもむろに、僕はカバンからボンベを取り出し、こう言った。


「今日、ここにきたのは、先生の12年前の忘れ物を届けるためです」


龍さんの顔がみるみる赤くなった。


橋本龍太郎さんは、僕からボンベを奪いとると、製造年月日、メーカー名を確認したあと、突然、立ち上がった。

僕は怒られると思い、身構える。

でも、龍さんは、僕に深々と頭を下げて、こう言った。



「確かに、これは・・・わが隊のものです。申し訳、ありませんでした」


驚いた。

拍子抜けとはこのことだ。


「僕に書いた葉書は、僕への警告ですよね?」と尋ねると、

「そんなことはない、あれはただ、本当に残されたボンベで命拾いしたことを伝えたかっただけだ」

 と笑った。


以来、龍さんは、「野口君が、僕のゴミを拾ってくれて」とマスコミで言ってくれた。

そのせいで「エベレストにゴミを捨ててきたハシリュウ」と叩かれた。

政治生命を脅かすほどに。


「申し訳ありません」と僕が言うと、

「いいんだ、オレがああいう発言をして叩かれれば、これから行く登山家は、ゴミを捨てられなくなる。

 せっかく野口君が清掃活動をしてくれているのに、オレたちが足をひっぱっちゃ、いけない」



何かをやろうとするとき、周りのひとは、いろんなことを言う。

行動には批判がつきまとい、何かを成し遂げるには、火だるまになる覚悟が必要だ。

龍さんはそのことを、身をもって教えてくれた。

亡くなる前、龍さんは僕に木のピッケルをくれた。大切な形見。

僕は辛くなると、そのピッケルを持ってエベレストに登る。

狭いテントの中、横に置いて眠る。

寝返りをうつと、ピッケルの刃が当たっていたい。

でも、その痛みは僕に言う。

「いいか、見ることは、背負うことだ。火だるまになる覚悟をして、貫け!」


〜〜〜


背負った人たちの発言。

覚悟が違いますね!


貫く覚悟、見習いたいです!


長野/新潟の美容ディーラー 早川美容商事


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この記事へのコメント
橋本さん
なんか大好きになりました
人って いろんなな顔を
持っているんですね
一面で決め付けては
駄目とあらためて感じました!
Posted by かつ at 2012年11月18日 07:41
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